認知症の方の暴力や暴言は突然起こる事があります。
突然意味不明な興奮や暴言、暴力、時には自らの身体を攻撃する自傷行為も見られます。
その原因を辿ると多くの理由が考えられます。
例えば認知症になると、初期症状の場合は自分で出来ていた事が段々と出来なくなり、自分に対する苛立ちが強くなります。
特に健常者時代に何でも自分で行なっていた人や、高学歴、高い役職に就いていた人はプライドも高い傾向にあるため、これらの症状が強く現れます。
また、施設に入所している方などは特に自分が認知症と認識していない場合が多いので、周りの重度な入所者を見るとストレスなどの苛立ちが強くなります。
また話好きな方が認知症を発症すると、同じ話を何度もする傾向が強いため、周りの人があまり聞く耳を持たないなどの対応をすると、自己主張の1つとして暴力や暴言が現れる傾向になります。
更に中度や重度に進行すると幻覚や幻視、幻聴や妄想など様々な周辺症状が出てくるため、不安や不穏な状態に陥り周りの他者を攻撃する場合もあります。
特に自分で片付けた財布やお気に入りの物を、その後どこに片付けたのか分からなくなり、物盗られ妄想に発展してイライラしたり、常に誰かが自分の悪口を言っている様な感覚になる被害妄想が出てきて不満を爆発する方もいます。
この様な時は周囲の対応も大事になり、例えばご飯を食べていない、お風呂に入っていない、物が無くなった、誰かが自分を非難するなどの訴えが本人からあった場合は、決して否定せずに本人の意見を肯定し、その行為が何度もくり返されてもその都度受容する気持ちが大切になります。
当の本人はそれらの事を全て忘れているため、その1回1回が本人にとっては初めての行為になります。
仮に周りが1回毎に否定するとそれが引き金になり暴力や暴言に発展していきます。
特に認知症の方は感情が不安定で、常に不安で怖い思いをしています。
その対応をどれだけ周りが適切に接するかで本人の行動も穏やかになり、安心して生活を送る事ができます。
その他に脳血管障害により失語症や構音障害などが合併すると、自分の意思を伝える事が中々できません。
本来なら上手く伝わる事が相手に伝わらないのでイライラが募り暴力や暴言に移る時があります。
特に脳血管障害の影響で身体が片麻痺になるケースが多く、普段の生活でも本人は支障を多くきたします。
例えば服が上手く着れない、ご飯を上手く食べれない、トイレが上手くできないなど様々です。
この積み重ねがイライラに繋がり普段穏やかな人も一気に怒りを爆発させる事もあります。
初めのうちは本人も自分以外の人から手を貸されるのに抵抗を感じ嫌がりますが、普段の生活が出来ない事の方が本人にとっては苦痛な事なので、少しずつ周囲の方が手伝うと良いです。
認知症による暴力や暴言にはこの様に多くの理由があり、決して本人が意図的に行っている訳ではありません。
イライラに対する背景を知った上で周囲の人が上手にケアすると本人にとっても良い事になります。