認知症を鑑別診断するテスト・検査

日本の医療福祉現場において認知症と呼ばれている症状にはいくつか種類があります。

 

そして、それぞれの症状や病理的特徴に応じて、鑑別・テスト方法は異なります。

 

実際にどのような種類の認知症があり、鑑別診断されるのかを紹介します。

 

1つめはアルツハイマー型です。

 

世間一般でいわゆる認知症として認識されているのは、このタイプが大半です。

 

病理的特徴としては、初期から記憶障害が見られる点があります。

 

物を置いた場所を忘れたり、同じ行動を何度もしたり、最近の出来事が思い出せないといった事が次第に目立つようになります。

 

症状が進むにつれて次第に言葉の意味や名前といった意味記憶も障害され、会話に支障をきたすようになります。

 

また、脳機能全般が障害される事も特徴であり、注意力や理解力、発想力、意欲といった社会生活を営むための能力が低下するようになります。

 

その結果、短気や頑固になったり、妄想が出現したりする等、人格そのものが豹変するような症状となります。

 

診断基準としてはDSM-ⅣやNINCDS-ADRDAの臨床診断が用いられます。

 

また簡易に鑑別診断するテスト方法としてはHDS-Rが有名です。

 

HDS-Rは質問形式で認知・記憶能力を簡易に評価する方法で、ある程度、症状が進行し記憶障害が出現している場合に検知が行えます。

 

しかし、記憶障害に特化した内容であるため行動手順や注意能力といった他の能力が低下している場合には検知できないという問題点もあります。

 

2つめは脳血管性です。

 

これはいわゆる脳卒中(脳血管障害)に起因するものです。

 

多発性の脳梗塞でよく見られますが、小さな梗塞のみでも出現する場合があります。

 

病理的特徴としては、今まで自分が体験した内容のエピソード記憶は比較的保たれていることが、アルツハイマー型との違いです。

 

脳血管障害に由来するため、進行は急性かつ段階的に悪化します。

 

診断基準としてはDSM-Ⅳのほか、脳血管障害と認知症との間に因果関係を想定するNINDS-AIRENなどがよく使用されています。

 

また、簡易に鑑別診断する方法としてMMSEがあります。

 

MMSEはHDS-Rが標的とした記憶能力に加えて、視覚認識や注意能力、行動判断といった複数の高次脳機能を標的としています。

 

そのため、障害が発生している能力に応じて脳のどの分野で機能低下が生じているのかを推測する事ができます。

 

3つめはレビー小体型です。

 

中枢神経に多数のレビー小体が出現し、いわゆるパーキンソン病に似た経過を辿ります。

 

病理的特徴としては、視覚認知障害が初期から出現するようになります。

 

色彩を伴うような鮮明な幻視が出現するのも大きな特徴となります。

 

認知障害は変動し、良い時と悪い時の差が著明となります。

 

また、パーキンソン病用の症状が進行する事により、筋肉が固まったり歩行障害が出現するようになります。

 

鑑別診断としてはCDLBガイドラインの診断基準が一般的となっています。

 

このように認知症はその原因の発生機序により、症状や病理的特徴は異なり、鑑別診断する基準やテスト方法も異なります。

 

正確な治療を行うためには、適切な鑑別診断が重要となります。

 

 

認知症を患いながら老老介護をする時代がやってくる

 

 

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