要介護認定の区分について
要介護認定の区分は、軽い順から要支援1・要支援2・要介護1・要介護2・要介護3・要介護4・要介護5の7段階に分かれます。
例えば要支援1は日常生活はほとんど問題ないが、一部介助が必要であり、適切な介護サービスを受ければ要介護になることを予防できる状態を指します。
一方最も重度の要介護5は、一人で日常生活を送ることはほぼできず、あらゆる場面で介助が必要な状態を指します。
なお、要介護認定の区分は本人への介護にどの程度負担がかかるかによって変わります。
そのため認知症があったり、身体の状態があまり良くない場合でも、介護の手間がかからないと判断された場合は要介護認定の区分は低くなります。
そして要介護認定の区分によって、介護保険の給付の限度額が定められています。
介護保険では、使ったサービスの料金が給付限度額の範囲内だった場合、少しの負担額で済みます。
一方給付限度額を超えてしまった場合、その分は全額自費になってしまいます。
そのため介護保険のサービスを利用する際は、給付限度額内に収めることが重要となります。
そして要介護認定の区分が重くなればなるほど、給付限度額は大きくなります。
というのも、要介護認定の区分が重くなると、それだけ多くのサービスが必要となります。
また、サービスを提供する側に対してもより負担が大きくなるため、サービスの利用料金も高くなります。
そのため、要介護認定の区分が重い方の場合は、それだけ給付限度額を多くする必要があるのです。
また要介護認定の区分によって、受けられるサービスも異なります。
例えば比較的経費で利用することができる特別養護老人ホームは、原則要介護3以上必要となります。
また定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、看護小規模多機能型介護等は要介護の方しか利用することができません。
また、福祉用具を利用する場合でも車椅子や介護用ベッド等は、一定以上の介護度がある方は無条件で利用できますが、そうでない場合は医師の意見が必要になることもあります。
介護保険の仕組み
介護保険の財源は国・都道府県・市区町村による税金50%、被保険者による保険料50%で賄われています。
そして、介護保険は40歳以上になると自動的に加入するものになります。
介護保険の被保険者は年齢によって、第1号被保険者と第2号被保険者に分かれます。
まず60歳以上の場合は、第1号被保険者となります。この場合、保険料は市区町村に支払っていきます。
この時、収入が多い場合は個別徴収になりますが、収入が少ない場合は年金からの天引きとなります。
次に40歳以上65歳未満の場合は、第2号被保険者となります。
この場合、保険料は各医療保険料と一緒に徴収されます。
そして各医療保険者が保険者に交付していきます。
一方、実際に介護保険のサービスを利用するためには要介護度の認定を受ける必要があります。
第1号被保険者の場合は、支援や介護が必要となった時に窓口に申請を行えば、要介護認定の審査を受けることができます。
一方第2号被保険者の場合は、末期がんや関節リウマチなど、加齢によって生じる特定疾病を患っていることが条件となります。
そして介護保険の認定区分が出てはじめてサービスを利用することができます。
サービスを利用したら、被保険者は費用の1割か2割を負担します。
そしてサービス提供者が保険者である市区町村に請求することで、サービスにかかった費用の9割か8割が支払われます。
なお、被保険者の負担料金が1割か2割かは、どの程度所得があるかによって異なります。
ただし介護保険のサービスの中には、一旦被保険者が全額支払う必要があるものもあります。
それが住宅改修です。介護保険では、住宅改修の費用が20万円以下の場合、1割か2割で行うことができます。
ただし住宅改修の場合、料金の支払い方法は原則償還払いになります。
これは被保険者が一度全額支払い、後から保険者が負担する分が返還されるというものになります。
ただし事業所によっては、最初から被保険者の支払額が1割か2割で済む「受領委任払い」を取り入れている所もあります。
要介護認定の手続き・申請の流れ
介護保険証は通常65歳以上になると自動的に届きますが、実際に介護保険を利用するためには、要介護認定を受ける必要があります。
そして要介護認定を受ける為には、対象者の住民票がある市区町村で申請を行う必要があります。
申請を行う際、必要となるのが「介護保険要介護(要支援)認定申請書」になります。
この書類は担当の窓口でもらえる他、インターネットから印刷することも可能です。
この書類に対象者の氏名や主治医の情報などを記入し、担当の窓口に提出します。
なお40歳以上65歳未満の方の場合は、健康保険との関係もあるため、健康保険被保険者証も必要になります。
そして記入が終わったら担当の窓口に「介護保険要介護(要支援)認定申請書」を提出するのですが、窓口に提出できるのは基本的に本人または家族になります。
ただし本人・家族共に窓口に向かうのが難しい場合は、担当の地域包括支援センターや居宅介護支援事業所が代行申請することも可能です。
窓口に書類を提出してしばらくすると、訪問調査の日程を調整するために連絡が来ます。
訪問調査では本人の心身の状態を把握するために、本人の所に調査に来ます。
この時対象者だけでなく、家族や地域包括支援センター職員・ケアマネジャーなども立ち合いすることができる為、本人だけでは心配な場合は、一緒に立ち会う人も都合がいい時を選ぶようにします。
また訪問調査と同時進行で、市区町村から主治医に対し、主治医意見書の作成依頼がされます。
主治医意見書は市区町村から依頼が出され、医師が記入した後市区町村に再び送られるため、対象者が直接書類の行き来に関わることはありません。
そして訪問調査の結果と主治医意見書の内容を基に、コンピューターで本人に対してどの程度介護に時間がかかるか数値を出します。
これが1次判定になります。
その後1次判定の結果や訪問調査の特記事項を基に、2次判定が行われます。
2次判定では医療・保健・福祉の専門職で構成される介護認定審査会で、どの程度介護の手間がかかるか審査していきます。
そして申請からおよそ1か月後に、決定した要介護認定が印刷された新しい介護保険証が届くようになります。
介護保険で受けられるサービス一覧
要介護の方は介護給付、要支援の方は予防給付を受けることができます。
そして介護給付の場合、さらに施設サービスと居宅サービスに分かれます。
施設サービスの中でも介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は要介護3以上が条件となります。
一方リハビリに特化しているのが介護老人保健施設となります。
そして特定施設入居者生活介護は、介護保険から指定を受けた有料老人ホーム等になります。
また、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、認知症の方を対象とした施設となります。
次に居宅サービスですが、この場合は居宅介護支援専門員(ケアマネジャー)が計画を作成し、その計画に沿ってサービスを利用していきます。
訪問介護(ホームヘルプ)はヘルパーが家に来て、家事や入浴介助等が行われます。また要介護の場合は、夜間対応訪問介護を受けることもできます。
訪問看護は看護師が家に来て、血圧測定等が行われます。
そして日中・夜間通して訪問介護と訪問看護が連携して提供される定期巡回・随時対応型訪問介護もあります。
他にも訪問リハビリテーションは、作業療法士等が家に来て、運動指導等が行われます。
居宅療養管理指導は通院が困難な方に対し、医師・栄養士・薬剤師等が訪問し、療養上の管理や指導が行われます。
そして専用の風呂を自宅に持ち込む訪問入浴もあります。
一方、自宅から通所するサービスとしては通所介護(デイサービス)があります。
これは施設に通い、食事や風呂などのサービスが受けられるものになります。
また最近では、運動に特化した半日型のデイサービスもあります。
一方、日中施設で過ごす中でリハビリを受けられるのが、通所リハビリテーション(デイケア)になります。
また、施設に短期間宿泊する短期入所生活介護(ショートステイ)もあります。
そして小規模多機能型居宅介護は訪問介護・通所介護・短期入所生活介護を合わせたものとなります。
なお、介護保険では福祉用具貸与を受けることもできます。
ただし肌に直接触れるものは購入する必要があります。
さらに、住宅改修も受けることができます。
そして居宅サービスに関しては、基本的に予防給付も同様の内容となっています。
介護保険法の成り立ちと仕組み
介護保険法が制定される前、介護が必要になったら市区町村がサービスの種類や提供機関を決めていました。
そのため利用者に選択の自由はなく、事業所間の競争もなかったため、サービスの内容も画一的でした。
また、介護する場がないために病院に長期入院する方も多く、医療への負担も大きくなっていきました。
そしてさらに高齢化が進み、介護を必要とする方や介護を必要とする期間が増える一方、核家族化や家族の高齢化により、介護の担い手にかかる負担も大きくなっていきました。
そのため2000年、介護保険法が制定、介護保険制度が始まりました。
介護保険制度では、あくまで自立支援を目的としています。
そのため、介護保険制度ではできるだけ住み慣れた所で生活できるよう勧めています。
また、これまでは医療と介護が別々に提供されていましたが、介護保険制度ではプランに位置づけることで、一体的に提供することが望ましいことになりました。
また、介護保険制度では利用者本位のサービス提供が求められています。
サービスは利用者が自ら選択し、サービスを提供する事業所と契約します。
また、ケアプランを作る際もできるだけ利用者の意向に沿うことが求められます。
さらにより多様なサービスを提供できるよう、市区町村や社会福祉法人だけでなく、民間企業・NPO・住民等、様々な団体がサービスを提供するようになりました。
また、介護保険制度では医療保険同様、社会保険制度を取り入れるようになりました。
介護保険法が制定される前、サービスの利用者負担分は、対象者と扶養家族の収入によって決まっていました。
そのため所得が高い方には負担が大きいという問題がありました。
介護保険制度ではその負担を少しでも軽減するため、原則1割負担となりました。
ただし、2015年からは一定以上所得がある場合は2割負担に改正されました。
2000年に改正された後、介護保険法は何度か改正されています。
そして現在、介護保険はより地域で生活ができる様、地域全体で見守りを行うシステム作りがされています。