認知症を描いた映画作品は2017年にいくつか公開されます。
その中の日本の作品「話す犬を、放す」は、2017年3月11日有楽町スバル座ほか全国で公開された認知症をテーマにした母と娘の物語です。
つみきみほさん演じる売れない女優の下村レイコは、俳優スクールで演技を教えながら自分も芝居を続けています。
ある日レイコは、眞島秀和さん演じる学生時代の劇団仲間で人気俳優となった三田大輔から映画出演の話を持ちかけられます。
ビックチャンスに大喜びをしたのもつかの間、田島令子さん演じる母親のユキエから死んだはずの昔飼っていた犬のチロが、時々家に帰って来るという電話がかかってきます。
実はユキエは「レビー小体型認知症」を発症し、幻覚を見ていたのでした。
映画の出演と母との介護生活を両立させようとするレイコと、母の葛藤を時にクスッとさせながら温かく見守るようなストーリーとなっています。
ドイツの作品で、異例のヒットを記録した「わすれな草」は、認知症になった母グレーテルを介護するため実家へ帰ってきたダーヴィットが、母の世話をしながら一緒に過ごす最期の時間を親友のカメラマンに撮影してもらったドキュメンタリー作品です。
もともと理性的な性格の持ち主だった母グレーテルは、病によって思いのまま自由に過ごし、徐々に記憶を失っていく母の介護を通して、夫婦と家族の絆を強めていく姿を描いた作品となっています。
また、16万部を超えるベストセラーで、岡野雄一さんのエッセイ漫画「ペコロスの母に会いに行く」が原作の「ぺコロスの母に会いに行く」は、2013年に公開された作品で、自身の体験をもとに認知症の母との何気ない日常が描かれています。
岩松了さん演じる長崎で生まれ育った団塊世代のダメサラリーマン、ちいさな玉ねぎ「ペコロス」のようなハゲ頭のゆういちは、毎日気ままに生活していました。
加瀬亮さん演じる父親のさとるが死んでしまったことから、認知症を発症してしまった赤木春恵さん演じる母みつえは、買い物に出て迷子になったり、ゆういちが帰ってくるのを駐車場で待ち続けたり、洗濯をしていない下着をタンスにいれたりするようになってしまいます。
悩んだゆういちは、ケアマネージャーに勧められ、不本意ながらもみつえを介護施設に預けることにします。
明るい雰囲気のグループホームには、記憶が学生時代に戻ってしまっていたり、誰にでもアメをねだったりとさまざまな症状の人たちが楽しく歌を歌ったりしている中、みつえは部屋にこもり縫い物をし続けるのでした。
幼い頃、ボロボロになった弟や妹たちの服を毎日縫ったり、夫のさとるが酒代に給料をつぎ込んでしまうため、破けたさとるの背広や幼いゆういちたち子供の服を縫ってなおしたりと、過去へと意識がさかのぼっていたのでした。
監督に「男はつらいよ フーテンの寅」などをてがけてきた森﨑東さんを迎え、深刻な社会問題を介護喜劇映画として「ボケるとも悪かことばかりじゃなかかもな」とユーモアたっぷりに描いています。