認知症に関する法整備の課題

認知症に関する法整備は、まだ行き届いているとは言えません。

 

課題として、次の点が挙げられます。

 

1、自動車運転で事故を起こしてしまう課題

認知症から運転事故につながる原因としては、空間認知能力が低下して接触事故を起こしてしまう、記憶障害で行き先を忘れたりして混乱し慌てて事故を起こしてしまう、信号や進行方向などの意味が認識できなくなり信号無視や逆走などを起こしてしまうなどが挙げられます。

 

認知症がある方で自動車運転をしている方は少なくありません。

 

また周囲の方が気づいて運転を止めるように言っても、本人なりの事情で止めてくれない場合が殆どです。

 

道路交通法の改正により、認知機能の低下によって生じやすい一定の運転事故を起こした場合、臨時の認知機能検査が行われ、認知症と診断された場合は運転免許の一時停止や取り消しがされることになりました。

 

これによって、事故を起こせば運転ができなくなるようにはなりましたが、事故を未然に防ぐチェック機能となる法的な整備はできていないのが実情です。

 

2、徘徊が原因で他者に損害を与えた場合(線路に無断で入って電車にひかれる事故事故など)の責任について

2007年に徘徊していた高齢者が鉄道の線路に入り込んで電車にひかれ、事故の影響で電車の通行の停止を余儀なくされた鉄道会社が、事故を起こした高齢者の家族に対して損害賠償を請求した裁判では、原告側の主張が退けられ、家族には賠償責任がないとされました。

 

しかしこれでは、鉄道側としては同様の事故が起きた場合、今後も多額の損害を覚悟しなければならないことになります。

 

同様の事故が起きないようにする対策は重要ですが、徘徊する高齢者が全くいなくなるようにすることは困難です。

 

事故が起きた場合には国が保証するなどの法整備がされると良いかもしれません。

 

 

3、成年後見制度の利用について

認知症になったことで判断能力が低下し、詐欺被害にあうケースが多くみられます。

 

成年後見制度の利用を申し立て被後見人となった場合、詐欺被害にあっても認知症と診断されていれば、購入した契約を取り消し、支払った金銭を取り戻すことができます。

 

しかし契約書が見つからなかったり、詐欺行為を働いた業者がどの業者か特定できない場合は、当然金銭を取り戻すことができません。

 

被害を未然に防ぐためにどのような法律があるとよいのかは、まだ解明されていません。

 

また、成年後見制度の申し立ては、重度の判断能力の低下でない場合を除いては、本人が申し立てに同意しなければ申し立てることができません。

 

また、成年後見人に選任された者が、被後見人の財産管理を行いますが、成年後見人の権利を悪用し財産を無断で使用してしまう事件が後を絶ちません。

 

家庭裁判所が後見人を監督することになっていますがきめ細やかに監督することは難しいのが実情です。

 

成年後見人の倫理意識に頼らず、どのような法的整備を行えば事件を防ぐことができるのかが、大きな課題と言えます。

 

以上のとおり課題は山積していますが、どれも生命や財産に関わる重大な課題ばかりです。

 

諸外国の先進的な取り組みを積極的に取り入れ、解決していくことが求められています。

 

 

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