好きな音楽に耳を傾けていると、自然に穏やかで優しい気持ちになったり気持ちが落ち着いたりした経験のある人はたくさんいることでしょう。
近年は認知症を患う高齢者の方が急増していますが、実は音楽を聴くことは認知症にも大変良い影響があります。
その効果はいくつかありますが、まずは歌詞を口ずさむことで、発声や発語、嚥下といった言語力や、記憶力などを改善する効果があるといわれています。
例えば若い頃によく口ずさんでいた歌詞であれば、歌うことでその当時のことが懐かしく思い出されるわけです。
また、タンバリンやカスタネットといった簡単に音が出る打楽器を使うとより効果は高まります。
昔歌を歌っていた人、楽器を演奏していたという人であればより一層の効果が見込めるでしょう。
さらに、サークルなどに参加したり、医療機関で療法士の先生について指導を受けるのであれば、人とコミュニケーションを取ることで社会性を高めることも可能です。
年を重ねると出不精になったりと、つい外に出ることに腰が重たくなってしまいがちですが、それでは認知症の症状は悪くなる一方です。
人と触れ合い、一緒に歌を歌うことは、社会参加にもつながるのです。
みんなで集まって合唱したり、自分のできる楽器を演奏して音を合わせるのは非常に楽しい時間となるはずです。
そこに笑いが生まれれば、免疫力も活性化します。
このような効果は、認知症のリハビリテーションの一つとして知られる音楽療法と呼ばれています。
日本ではまだ馴染みがありませんが、欧米では既にさまざまな医療機関で取り入れられて広く人々に知られた療法です。
もしも身体的な理由で外に出ることが難しい人であれば、食事中に音楽をかけるだけでも効果があるといわれています。
メロディーが頭の中に入ってくると、脳の血流が増えることが実験でわかっています。
同時に、脳が働くのに必要なブドウ糖が運ばれる量も増加し、脳は活き活きと活動するようになるのです。
もしも徘徊などの症状が出ている人なら、不安や興奮を鎮めて、協調性を取り戻させてくれるでしょう。
暴力や暴言といった症状がある人には、音楽はきっと素晴らしいリラクゼーション効果をもたらしてくれるに違いありません。
前述のようにまだ日本では医療機関に取り入れられていることは少ないのが現実です。
しかし、実施しているところでは、患者の年齢や好みに合わせて曲を選び、症状に応じて歌ったりカスタネットなどを利用して音を出したりするのだといいます。
近くにそのような医療機関がない場合には、家庭で行ってみると良いでしょう。
本人が気に入っている曲をネットでダウンロードして家族で聴くのも良いでしょうし、歌うのが好きな人であればカラオケボックスに家族で出かけるのもおすすめです。
特に決まり事はないので、好きな曲を選ぶところから始め、本人がリラックスして楽しんでいるなら症状の改善もきっと見込めるはずです。