今では認知症の親の介護が必要になることも少なくありません。
人格が全く変わってしまい、綺麗好きだった人が何日も同じ服を着て過ごしていたり、頭の回転が速かった人が一日中ぼーっとしているなどという症例もあります。
かつては社会的で活躍していた人や、尊敬されていた人が認知症になると過去と現在のギャップの大きさゆえに家族の落胆や悲しみや混乱が大きくなってしまうことも多いです。
家族が認知性の病気と告げられた時には、介護者は4つのステップを経て現実を受け入れることができるようになると言われています。
第1ステップが戸惑い・否定、第2ステップが混乱・怒り・拒絶、第3ステップが割り切り・諦め、第4ステップが受容です。
この4ステップのうち、家族が最も大変なのは第1、第2ステップの部分です。
まだ過去の姿にこだわりを持っている状態で、病気のことを受け入れられていません。
そのため、本人に対して「どうしてこんなこともできないの?」と怒ってしまったり、なじってしまうといったトラブルが多発することもあります。
この時期は相手の気持ちを傷つけない対応をとることで、お互いを必要以上に傷つけずに過ごすことが必要です。
以前まで尊敬していた人がボケてしまったら悲しいですが、昔の姿にとらわれずに今のいいところを見つけるようにしましょう。
昔賢かったのに今ではボーッとしているという状態であれば、でも昔と同じように優しいなどと受け止めてみましょう。
他にも、病気の症状に合わせて演技をしてみるという対処法もあります。
認知性の病気の人は、しばしば周りには理解不能な言動をとることがあります。
例えば80歳を過ぎた親が「お腹の中に赤ちゃんがいる」と言いだしたような場合は、昔お腹の中に子供がいた時の状態に頭が戻っていることもあります。
本人にとっては意味の通った正しい世界があり、それに則った言動をしているだけです。
ただ、周りにはそれが伝わらないので理解不能な言動として受け止められてしまうのです。
そこで「そんなわけない」と否定してしまうのは絶対にダメです。
自分の世界を否定されると困惑したり、不安になったり、怒りだしてしまいます。
家族がすべきことは、本人の世界を想像して、尊重し、現実の世界とのギャップを埋めてあげることです。
例えば「お腹の中に赤ちゃんがいる」というのであれば「何人目の子供さんですか?」などと話を合わせてあげるといいです。
演技をして騙しているなどと罪悪感を感じる必要はありません。
「毎回分けのわらかないことを言って」とイライラしているよりも、演技をして会話のやり取りを楽しむ工夫をしたほうが心穏やかに介護が続けられるでしょう。
介護されている本人も、自分が認められていることを感じられると安心して、良い方向に向かっていく可能性もあります。
本人の世界と現実とのギャップを少しでも埋めてあげることで、安心させてあげることが大切です。