公的介護保険制度は、平成12年4月にスタートしました。
従来の医療などに見られる保険診療などを参考にして、行ったサービスに対する対価をあらかじめ厚生労働省が定めておいて、その対価すなわち介護報酬について原則1割を自己負担とすることで、正式にスタートしたものです。
利用者負担は原則1割ですが、例外も存在しました。
居宅介護支援事業者におけるケアプラン作成費は、すべて介護保険で賄われ利用者負担はありません。
無論、介護保険財政が苦しくなる中で、すべてを保険者が賄うことが出来なくなってきている今、いずれは利用者負担を求められる時代が来ることが想定されています。
この他にも、かつては要介護1以上で入居できた特別養護老人ホームについて、要介護3以上へと引き上げたりあるいは利用料を1割から2割に引き上げるといったような改正も進んでいます。
所得が多い人を対象にしていますが、こうした条件の引き上げは、介護保険財政を始めとする社会保障費の増大で今後も行われていくと考えられます。
公的介護保険制度における財源は、原則として国税が25パーセント、地方税のうち都道府県負担分が12.5パーセントと市町村も同じく12.5パーセントを負担するように法律で定められています。
では、残りの50パーセントは誰が負担をするのかですが、この部分が40歳以上の人が支払う介護保険料と利用者の自己負担となっています。
つまり、利用者が増大してみんなが介護保険制度を利用すれば、それだけみんなの支出も増えていきます。
特に特別養護老人ホームに代表される施設をたくさん整備した地域と、在宅介護や介護予防に積極的に取り組んだ地域とでは、40歳以上の人が負担する介護保険料に大きな差が生じている状況です。
この状況では、いずれは施設への入居について制限をかけざるを得なくなるのは必定と言うこととなります。
在宅介護においても、デイサービスの利用や訪問介護における生活援助について、一部を介護保険制度から切り離す方向を国が示しています。
すなわち、在宅介護もままならない状況が生まれてきているわけです。
制度が悪化していく中でかつて国が示した、中負担中福祉から高負担低福祉へと切り替わってきているとまで言われる有様となっています。
ただし、公的介護保険制度としてスタートした以上、これを止めることはできません。
そんなことをしては、利用者が生活に困るのは自明だからです。
したがって、財政面での厳しさが増す中でも、サービスの質を削ってでも制度の維持を図らなければならなくなっています。
この公的介護保険制度は、本来はみんなでお互いを支え合いましょうという相互扶助の元で成り立っていました。
ただ、その後かつては社会福祉法人や行政しか行っていなかった福祉について、民間へも開放を行い民間企業等の参入も促してきています。
競争が生じたわけです。サービスの質がよいところは生き残れますし、サービスの質が悪いところは利用者がいなくなり淘汰されていく民間の競争の原理が働いて、今日に至っています。
介護保険制度では税金が多額に使われるとともに、利用者の負担や40歳以上の人の負担も相応に大きくなっています。
行政が介護保険制度などに対して、しっかりとした財政運営を行っているかどうかなどをしっかりとチェックすることも有権者には求められています。
公的介護保険制度の保険者である市町村や広域行政にあっても、その介護保険の利用が適正かどうか、ルール通りに請求されているかどうかのチェックは欠かせません。
基準違反や著しい不正に対する厳罰も毎年のように行われており、今後も介護保険制度を運営し続けられるように、保険者がしっかりと対応をしていくことが求められています。