介護離職の経済的リスク

2013年、厚生労働省の雇用動向調査によると、介護を理由に離職する人は約9万3000人で、そのうち男性は2万3000人、女性は7万1000人という数字が出ています。

 

年齢別に見てみると、男性は55歳から59歳、女性は45歳から49歳の割合が最も高くなっています。

 

介護と仕事の両立が難しくなり、とりあえず仕事を辞めて親の面倒をみようと考えての離職が多いですが、ほとんどの方が再就職先のことを考えていません。

 

皆さん、1年ほど経てば、再就職できるだろうと考えていますが、男性の約4割、女性の5割以上が、再就職するまでに1年以上かかっています。

 

介護離職をする世代は、子どもが大学生である場合もあり、経済的には決して楽ではありません。

 

企業に勤めているのであれば、もっとも給与が高い状態から、収入がほとんどない状態になってしまうというのは、気持ちの上でも落ち込んでしまいます。

 

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仮に、子育てがひと段落して、親の介護に専念できる状態であったとしても、経済的なリスクは決して小さくありません。

 

介護では、入院費や医療費が想像以上にかかります。

 

あてにしていた退職金も、徐々に減っていくことで、次第に介護サービスを利用する余裕がなくなってきます。

 

すると、自分で介護の負担を負わなければならなくなるので、ますます再就職するのが難しくなってしまいます。

 

介護離職による経済的リスクを考慮すると、退職という決断をする前に検討するべきことがあります。

 

 

1つは介護休業です。

要介護状態の家族を介護する会社員は、介護休業を取ることができます。

 

配偶者、父母、子、配偶者の父母、同居の祖父母、兄弟姉妹、孫を介護するのであれば、対象家族1人につき、原則1回、通算93日まで休むことができます。

 

また、雇用保険の被保険者であれば、介護休業給付金を受けることができます。

 

原則、休業開始前の給与水準の40%を給付金としてもらえます。

 

ただし、介護休業中に給与が支払われた場合は、介護休業給付金が減額されたり、支給されなかったりするので注意が必要です。

 

2つ目は介護休暇です。

介護休業のように長期に休む必要がない場合は対象家族1人につき年5日、介護休暇として休むことができます。

 

担当のケアマネジャーに相談すれば、有給休暇と組み合わせることで、介護していけるようなケアプランを作り直してもらえます。

 

3つ目は働き方です。

正社員として働いていれば、休日も深夜も必要に応じて会社に行かなければいけないというのが今の日本の企業の現状です。

 

しかし、介護が必要となると、そのような自由はきかなくなってしまいます。

 

厚生労働省では、勤務時間の短縮等の措置、法定時間外労働の制限、深夜業の制限を定めています。

 

勤務時間の短縮等の措置では、事業主に介護休業の日数と合わせて少なくとも93日利用可能な勤務時間短縮の措置を講じることが義務付けられています。

 

法定時間外労働の制限では、介護者が申し出をすれば、事業主は1か月24時間、1年で150時間を超える時間外労働をさせることができません。

 

深夜業の制限では、介護者の申し出により事業主が午後10時から午前5時までの深夜に労働させることを禁止しています。

 

働き盛りの人たちは、どうしても一緒に働いてきた人たちのことを考えてしまいます。

 

自分が介護をしながら働くことで、同僚に迷惑をかけてしまうのではないかという思いが先に出てしまいます。

 

しかし、自分の生活を守るためには、自分から会社の人事部や総務部、経営者に相談しなければなりません。

 

一度会社を辞めてしまえば、簡単に戻ることはできません。

 

経済的なリスクのことを考えれば、介護を自分一人のこととして抱えてしまうのではなく、社会全体で取り組むべき課題としてとらえ、みんなで協力していこうという姿勢が大切です。

 

 

介護離職を決断する前に考慮する点について

 

 

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