母の場合
母は肺が悪く、24時間の酸素吸入が必要となりました。
そして尿道にカテーテルを入れました。
さいわい母の部屋というのがあったのでそこに手すりつき介護ベッド、ポータブルトイレ、酸素の機械を置くことができました。
ベッドや酸素の機械は業者から借りられるので、買ったりしないことを絶対におすすめします。
こういう福祉用具に関してはぜひケアマネージャーさんに相談しましょう。
優秀な人なら介護保険の枠をにらみながら手配してくれます。
なおポータブルトイレや浴室の被介護者用の椅子など、いわゆる「水物」はレンタルではなく買い取りです。ひきとってはもらえません。
ほかの介護サービスとしては、
①医師の訪問診療(これで混んだクリニックへ行く必要がなくなりました)
②訪問看護師(週2回くらい来てくださり、簡単な問診、熱や血圧測定、血中酸素濃度のチェックをしてくださる上に、携帯電話の番号を教えてくださり何かあった時――例えば発熱――の際は、時間をかまわず連絡していいことになっていました)
③服薬管理(私どもが薬局に行く必要はなく、ケアマネージャーさんが持ってきてくれて1週間分の服薬カレンダーにいれてくれました)、ヘルパー派遣(掃除をしてもらっていました。私は同居していますがそれでも母のいる一階の掃除をお願いできました)
デイサービス(週3回、送迎つき、朝9時か午後3時まで)こういったところです。
なぜこのように行き届いていたかと言いますと、母がかかっていたクリニックが高齢者向けに非常に充実していたからです。
訪問診療も訪看さんもケアマネージャーさんも全員そこのスタッフです。
デイサービスもここが運営する施設でした。
そういうふうな母を在宅介護していましたが、食前と食後の薬を一度に飲んでしまうので目が離せない、外出時に使うポータブル酸素ボンベの扱いをいくら教えても覚えないのでこれもつきっきり、またカテーテルで袋に尿をためていましたが、毎日量を計測するように言われており、大変でした。
食事もベッドまで運び、それ用のテーブルを使っていましたし、外に出る時に車椅子なので、玄関の段差のため工事もしました。さいわい家の中はこうしたことを見込んで最初からオールバリアフリーにしてあったので良かったです。
そうやって在宅でみていましたが、カテーテルから黴菌が入るのか、肺がだめなせいなのか、たびたび発熱し、早朝から訪看さんを電話でたたき起こして来てもらい、クリニックに入院することが(入院設備があったのもさいわいでした)たびかさなり、私も疲れ果てて施設に入ってもらうことにしました。
しかし母のような酸素やカテーテルが必要な人間は、普通の老人介護施設では受け入れてもらえません。
いろいろ市内の施設を探し歩きましたが見つけられず困っていたら、ケアマネージャーさんが市外のちょっと田舎にある「療養型病院」を見つけてきてくれました。
ケアマネさんと一緒に施設見学と説明を受けに行ったら、「お母さまの年金の範囲内に収めます」と言ってもらい、そこにお任せすることになりました。
自宅から車で1時間くらいのところです。
いざ母が入ってみると、ベッドなどをレンタルにしておいたのが良かったことが判明しました。
部屋に残ったのはポータブルトイレのみでほかのかさばるものは全部業者が持って帰ってくれたからです。
現在は週2回面会と差し入れに行っています。
ここは癌など手術が必要な病気を発症しない限り最期までいられます。
父の場合
父は、ずいぶん前に脳卒中で倒れました。
当時は介護保険も後期高齢者保険証もありませんでした。
初めは半身が不自由とは言っても、まだよかったのですが、何度も発作を起こすうちだんだ悪化していきました。
家をオールバリアフリーにしておいてほんとに良かったと思ったのは父の時です。
和室の部屋から廊下へのあのちょっとした段差でつまづくのです。
家を新築して親を引き取るという方にはバリアフリーをおすすめします。
私たち夫婦が家を建てたころはまだバリアフリーの家など住宅展示場にもありませんでしたが、大工さんにムリを言ってそうしてもらったのです。
それに手すりもトイレ、浴室、廊下、玄関(家の中側)といたるところに設置しておきました。
これがいざ親が倒れた時に非常に役に立ちました。
父はそんなふうにたびたびの発作で何度も入院しましたが、どうも一日オムツでベッドで寝てすごすことになると(半端ない身体の重さなのでオムツ交換もさることながら、倒れられると私の夫でも起こせないのです。)
これは家ではみられないと判断し、施設入居を考えました。
入院中に病院のケアマネ的な役割の方に「老人保健施設」を提案されました。
それで老健をいくつも見学に行き予約しました。病院と言うところはいられるのは3か月が限度です。
それで二つめの病院にいたときに、老健のひとつから「空きました」と連絡があり入所しました。
しかし老健は永遠にいられる施設ではありません。あくまでほかの施設に入るまでのつなぎなのです。もちろん老健の方は「追い出すようなことはしません」とおっしゃってくださいましたが。
父も私たち夫婦も予算に余裕がありませんでしたし、「要介護3」だったので、狙いは特別養護老人ホームに絞りました。
しかしいくら施設訪問に行ってもどこも2年3年待ちが短い方です。
途方に暮れていたのですが、ある日思い立ってうんと山の中の特養に訪問してみました。
するとそこの施設の方が「実はこれはまだ発表していないのですが、近日中にもうひとつ特養を建てるんです」とおっしゃったのです。
それで詳しく聞きますと、我が家の近所でした! 信じられない思いですぐ予約しました。
けっきょく次の年にオープンし、オープン一か月後に入所できました。
新しいだけに全室個室のテレビ・洗面台・クローゼットつきで、全館床暖房、また入浴施設は介護に特化されています。
実は特養の入所は「早い者勝ち」ではなく「緊急度の高い順」です。
父は運が良かったです。テレビが大好きなので、遠慮なく個室でずっとテレビをみています。
またこの施設はいくつか個室をまとめて大きな部屋として独立させており、食事はその大きな部屋に備わったロビーで食べます。
介護士は大きな部屋にふたりから三人がいつもいらっしゃるようです。
こちらも週2回面会と差し入れに通っています。
施設入所を活用すること
私は親を施設にいれることにためらいがありませんでした。
というのも私自身精神疾患をかかえており、長年精神科に通院している身ですので、「自宅で看取りまでは無理」と線をひいていたのです。
施設に入れると世間体が悪いとかは、いっさい考えたことがありません。
また親戚などからあれこれ言われる方も多いと思いますが、お金も手も出さずに「口だけ出す人」の意向に添う必要がどこにあるでしょうか。
また私には妹がいましたが、全くと言っていいほど手伝いません。これには少々腹が立っています。きょうだいのひとりに介護を押し付けず、なんらかの形で介護負担を平等に分担することが肝要と思います。
それから最後にケアマネジャーさんのことをひとこと付け加えます。
ケアマネジャーといってもいろいろです。母の場合はクリニック所属でとても有能でした。
一方父の場合は「地域包括支援センター」の方でした。
とても親切で良い方でしたが、介護認定をやりなおし、父が「要支援」から「要介護」となると、「すみません、私は要支援までなので」とおっしゃいました。
だからその方とは縁が切れてしまったわけです。地域包括支援センターのケアマネさんが全員そうなのかは、正直よくわかりません。
でも、とりあえず介護となったら地域包括支援センターか、もしくは母のクリニックのように自前で訪看ステーションを持っている所に相談されるのが良いかと思います。
介護認定がまず第一です。それが決まらないことには「介護プラン」も立てられませんから。