90歳を超えてからの母は、若い時代の気丈さが影を潜めて、とてもおとなしくなってしまったのです。
時々変なことを言ったりしましたし、買い物に行って何時間も帰ってこないこともありました。
そして出かけなくなり、部屋でテレビを観る毎日、でもニコニコと笑うので「まだらぼけで可愛いおばあちゃん」になったと思ってはいました。
ヘルパーさんがとてもよかった
「訪問介護」を頼んだ頃は、抵抗していたのに留守勝ちの娘よりも優しいし、なんでもやってくれるので安心したみたいです。
現在では「訪問介護」とは言わないみたいで、内容も大分変わってしまってい居るようですが、母が80代になったばかりの頃は、すごくありがたい内容でした。
とにかく自分以外の人が片付けるのがいや、自分の部屋は「自分だけの城」だと思っているので、ともかく何でもかんでも溜め込むと絶対に片付けないし、当然片付けさせてもくれません。
何十年も前の服から着物から靴やバッグなどは良いとしても、紙袋や箱の類まで溜め込んでしまったままなのです。
ところが、ヘルパーさんをお願いした日に、マネージャーと2人で来てくれて、アッと言う間に母にはちゃんと話していましたが「すっかり片付けて」くれましたから、部屋がすっきり広くなりました。
ついでに大掃除までしてくれたのは、物凄くありがたかったし、嬉しかったです。
気分よくおしゃべりして楽しそう
若い頃はオシャレでお風呂好きでしたが、少しボケてきて自分でも自覚するようになってからは「お出かけ」しなくなったので身奇麗にしなくなってしまいました。
ヘルパーさんとの相性もよかったのでしょう。
週2回は入浴もするようになって、また勧められてデイホームにも通い始めます。
私はちゃんとしたオシャレ着を用意して、元気な声で「言ってらっしゃい」と送り出します。
絶対に娘である私には「楽しい」とは言わないのに、ヘルパーさんにはデイホームでのことを楽しそうに報告したり、楽しいといっていたようです。
デイホームでは「可愛いおばあちゃん」
戦後女一人で私を育て上げてくれた気の強い母が、こんなに可愛いおばあちゃんになるなんて、私にもわからなかったこの変化は、多分とても相性の良いヘルパーさんにめぐり合えたから、と思っています。
近くの知人のお母さんもヘルパーさんを頼んで居ましたが、このおばあちゃんは男の人が大好きで「若い男性のヘルパーさん」だとご機嫌なのだそうです。
見ていると「気分が良くない」と言って居ましたが、人はそれぞれですから機嫌がよいのなら家族は少しは我慢したほうが良いのでしょうね。
母は「男性に世話されるのは絶対にいや」なので、娘と同じ年代の女性に介護してもらいました。
娘の言うことよりもヘルパーさんの言うことの方が聞くことさえありました。
つくづく相性の良い人達でよかったと思います。
歯の手入れも訪問診療ですっかりきれいに
とてもありがたかったのは、入れ歯が合っていなかったので、訪問治療をお願いしたことです。
大分手入れせずに居たので、入れ歯が全く合わなくなっていて食事が思うように摂れませんでした。
でも、まだ若くてきれいな女性の歯医者さんで、優しく丁寧に接してくれましたから、新しい入れ歯が出来上がっても、月に1回の検診は続けてもらいました。
費用も保険で1割ですから、とてもありがたかったですね。
私が歯医者に連れて行くことは絶対に無理でしたから、(嫌がってわがままになるので)体調の管理も歯がきちんと入って食べられるようになった時、感謝の気持ちがこみあげたのを覚えています。
実の娘と一緒でよかったのか…
お嫁さんだったら大変ですよねえ。
実の娘と同居だったから、しかも自分で建てた家で自由気ままが出来たから、長生きしたのかもしれません。
適当にボケていて、適当にわがままで、大抵のことは我慢しなかった母の人生。
とても幸せな老年を過ごせたのではと、思います。