2人の娘さんを嫁に出し、田舎の家で旦那さんと趣味のゲートボールに没頭しながら、充実した余生を過ごしていたKさん。
近所の方々にも好かれ、頼りにされ、いつも会話の中心にいました。
しかし、ある日物忘れがひどくなったと感じるようになったのを境に、認知症と診断され、自分で歩いたりはできるものの、今まであたり前のようにやっていたことをおこなうのが難しくなってしまいました。
自分の物と他人の物の区別がつかず、旦那さんにも疑いの気持ちを持つようになってしまったKさん。
懸命にKさんの介護をしていても、疑いの目をかけられ、ほかの人に相談することもできず、ストレスの募っていったKさんの旦那さんは、Kさんの介護への限界を感じ、娘さんたちに相談しました。
2人とも、車で1時間ほどの距離のところに住んでいたため、休日は交代でどちらかの娘さんが実家に帰り、Kさんの旦那さんと一緒にKさんの介護をするようにしました。
しかし、Kさんの認知症は進み、昼夜問わず、徘徊するようになってしまいました。
徘徊中に交通事故にでもあったら…と心配し、思い切って、施設への入所を検討することにしました。
このとき、ポイントとなるのは…
病気の療養が目的ではない、リハビリの必要な病状等はない
生活の場として面倒をみてほしい
の2点です。
『病気の療養やリハビリの必要』という点は、施設に求める、医療サービスの質や程度を判断することができます。
仮に、療養やリハビリが必要な場合、その医療サービスを十分にできるような管理体制の整った施設を選ぶ必要があります。
例えば、看護師の勤務体制や医師による診察の頻度はもちろんですが、併設病院の有無や、かかりつけの病院はどこになるのかも確認すべき内容です。
かかる病院の規模や診療科の種類はどのようなものがあるのか、を把握しておくことにより、病院で診てもらう際に、施設の人が連れて行ってくれるのか、もしくは、診療科によっては、家族が連れて行かないといけない場合が出てくるか、を明確にできます。
Kさんの場合、週に数日なら、娘さんたちが時間を工面し、病院に連れていくことが可能なようです。
そのため、いずれ病気の療養やリハビリが必要になっても、少なからず、家族で対応できます。
よって、今現在は、あまり高度な医療サービスを求める必要はなさそうです。
『生活の場として面倒をみてほしい』という点では、施設に対して、どのようなサービスを求めるのかを判断することができます。
自分と他人の物の区別がつかなくなってしまったKさん。施設ではほかの人に迷惑をかけないためにも、可能な限り対人トラブルを避け、安心して生活をおくってほしい、とのことから、多床部屋より個室を希望しました。
また、いつもだれかと一緒に時間を過ごし、楽しんでいたKさん。施設では、いろんなレクリエーションを楽しんでもらいたい、とのことから、レクリエーションの充実した施設を希望しました。
以上の点を踏まえて、「特別養護老人ホーム」(特養)、「介護老人保健施設」(老健)、「介護療養型医療施設」の3つから選ぶとすると…
医学的なサポートは少ないですが、個室があり、レクリエーションを充実させ、入所される方が以前と変わらない生活を送れるようにしている、「特別養護老人ホーム」(特養)がよさそうです。